FC2ブログ
07«1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31.»09

A loved one

女性同士の恋愛を取り扱う百合小説サイトです。オリジナル小説で主に年上×年下を取り扱っています。無断掲載・無断転載・複製・配布等は禁止です。以上の事を踏まえた上でのご入場宜しくお願い致します。

第2章   諦めきれなくて③   side椿 

まさか、またこの家にこの子を上げることになるなんて思いもしなかった。
久しぶりだからか、タガが外れたのかもしれない。
タオルを渡すついでに抱きついたり、風呂上がりのあの子を見て欲情したり、その挙句、キスまでしてしまうとは何たる失態。
あの子の幸せそうな今を聞いて嬉しい。


でも、


胸の奥が締め付けられるような痛みがジクジクと私を蝕む。

彼女ができたと聞いて、喜んだ私もいたが、大半の私は嫉妬に荒れ狂っていた。
もう、私のこと好きじゃ無いの?
普通、付き合ってた人に、付き合ってる人の話をする?

知らぬ間に涙が流れ、あの子のあんな優しく心配してくれている表情を見てしまったら、体が勝手に動いてしまった。


「椿さんがっ!!私の幸せを決めないでくださいっ!!!」


でも、あの子の、悲痛な叫びを聞いて、私は思考が一瞬だけ、停止した。

そして、気がつく。

私は、私なりの幸せを見つけるとか言っておきながら、この子に、世間一般の幸せを押し付けようとしていた事に。
その大切な事に気がついた途端、止め処もなく涙が溢れてきた。

思わず離れていた僅かな距離を詰めて楓の首に手を回し、思いっきり抱きつく。

「ご、ごめっ……なさ、い……私、かっ、勘違い、して、……ふっ、うぅ……」

涙が、止まらない。
堪らず、楓の肩に顔を押し付け涙を止めようと必死になる。
それでも、止まらない涙。

無理に抑えようとする泣き声が、部屋に響く中、そっと私の背中と後頭部に何かが触れる。
そして、ギュッと微かな力で抱き締められる。
後頭部にある手は小さな子供をあやすように優しく、私を撫でる。

楓は何を言うでもなく、ただ私を優しく抱きしめ、私の涙が止まるまで、ずっと頭を撫で続けた。



本当に、私はどうしようもない。

こんな、大人なのにみっともなく年下の子に泣き付いて、慰めてもらって、

でも、それは、楓だからできる事で、

やはり、半年ほど経った今でも、私は楓の事が大好きなんだって、

楓が他の人と仲よさそうに歩いている未来なんて想像したくなくて、



手放したくないと、



思ってしまって、
途端に涙が引いた。

それでも、やはり、私はいつでもこの子から離れられるような立場にいなくちゃいけなくて、
私がこの子を縛るような立場に居てはいけなくて、
不自然にならない程度に、ゆっくりと楓から離れた。

「ごめん、ありがとう」

楓は、名残惜しそうな顔で、いえ、もっと甘えてもいいですよ。
何て言うから軽く下唇を噛んで押し止まる。
その様子を見てくすっと前から笑い声が。
俯いていた顔を上げると、少し見ないうちに同じ目線になった楓の顔が見える。
それは私が泣いていたのなんて御構い無しに最高に幸せそうな笑顔で思わず言葉を失う。

「椿さん。私は、椿さんと一緒に居たいんです」

聞いているだけで、心安らぐ程の、甘く、優しい声で、言葉で、私の鼓膜を揺らす。

「今すぐ、何て言いません。ゆっくり、ゆっくりで良いんで、考えてもらえると、嬉しいです」

そう言うと、楓は小雨になってきたんで今日は帰りますね。
その言葉に、つい、

「服は……っ」

なんて引き止めたい気持ち丸出しの言葉しか出なくて、それを感じ取ったのか楓はふわりと微笑んで、

「また、ここに来れる口実として借りて行きますね」

言ってから恥ずかしくなったのか少し顔を赤らめて短くなった髪の毛をいじる。
しばらく、テレビの音しか部屋に響かず、耐えきれなくなったのか楓は、

「すみません、突然お邪魔して。ありがとうございました」

そう言うと乾ききっていないリュックを持って玄関へと向かう。
私は黙って、楓の後を付いて行く。
靴を履いてトントンとする楓の後ろ姿を見て、何かがこみ上げてくるがぐっと堪える。
楓は、ゆっくりと振り返って、

「また、来てもいいですか?」

その言葉と、顔で、何かが吹っ切れて、



「ふふっ」



つい、笑ってしまって、
貴女を不安にさせる。

でも、

だって、

さっきまでのカッコいい貴女はどこに行ったの。
今は借りてきた子犬のように眉を下げ、否定されるのを怖がる様に伺う。
そんな、可愛らしい姿を見たら笑うしかない。

あぁ、やっぱりまだ好きなんだなぁ。

って自然に思って、私はひとしきり笑ったら、貴女を安心させられる言葉を紡ぐ。



「勿論」



何かが吹っ切れた私は、今、最高に笑えた気がした。

スポンサーサイト



category:  第2章諦めきれなくて

cm 0   tb 0   page top

コメント

page top

コメントの投稿

Secret

page top

トラックバック

トラックバックURL
→http://true0201.blog.fc2.com/tb.php/94-8a1bacf6
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

page top

プロフィール

最新記事

カテゴリー

最新コメント