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A loved one

女性同士の恋愛を取り扱う百合小説サイトです。オリジナル小説で主に年上×年下を取り扱っています。無断掲載・無断転載・複製・配布等は禁止です。以上の事を踏まえた上でのご入場宜しくお願い致します。

第2章   諦めきれなくて② 

「———」

「———」





余りにも、突然のこと過ぎて、椿さんを突き放すことも声を出すことも出来ずに、ただ、数センチ先に椿さんの閉じた目がある、という事しか理解できなかった。


やがて、ゆっくりと唇は離れ、椿さんの表情を見る間もなく、ギュッと力強く私を抱きしめた。
その、温もりに正気を戻す。

「あ、えっと、つば」
「喋らないで」

ピシャリと耳元で言われ、んぐ、なんて可愛げも何もない声で反応するしかなかった。

誰も喋らないダイニングには明かりのついたテレビの雑音が響くのみ。

この椿さんに抱き着かれている状態。

嫌ではない。むしろ万歳。なのだが、態勢が、態勢が辛い。
椿さんに抱き着かれた反動で体は斜めになり、椿さんの背中に回そうか悩んでいる手は空中で止まったっきり動かない。
いや、動かせない。
ピクリとでも今私が動けばこの状態が終わってしまいそうで、動くに動けなかった。

そう私が悶々と考えていると、幸せで辛い状態は遂に終わった。

ゆっくりと椿さんは私の首に回した手を解き、ゆっくりと私から離れる。
離れても俯き、髪で隠れた椿さんの表情は見えない。

「……椿さん?」

私の声とは思えないほど緊張した声がテレビの雑音に混じる。

私の声に椿さんはピクリと肩を動かし、ぎゅっと手を握りしめ、顔を上げた。


その顔にはいつもの表情があって、でも目を引くものが目尻にあって、顔を上げた反動で、つー、と頬を伝った。



「少し早いけど寝よっか」



そう言うと椿さんは布団の準備をしてくるね、と言いソファから立ち上がる。
その、余りにも何事もなかったかのように振る舞う椿さんを見て、思わずすれ違う椿さんの腕を掴んだ。

椿さんは立ち止まるが、振り向いてくれない。

「椿さん」

私は呼び掛ける。

「ねぇ、椿さん」

私を見て欲しくて、
貴女の表情が見たくて、


「ねぇ…………椿」


私は呼び掛けた。

私の呼び掛けに掴んだ腕がピクリと反応するがそれでも振り向いてくれない。
仕方なく私はソファから立ち上がり後ろから椿さんの顔を覗き込む。

一瞬、目が合うがすぐに逸らされる。

椿さんは、唇を噛み締め、今にも大きな声で泣き出しそうな悲痛な表情を浮かべていた。
その顔を見て、私はつい咄嗟に、この人を笑顔にさせたいと、思ってしまって、



「もしかして椿さん、まだ私の事好きなんですかー?」



なんて冗談めかして言ってしまった時にはもうすでに遅くて。

椿さんは大粒の涙を流し始めてしまって。

それを見てようやく、失敗した。なんて思って。




でも、


涙を流す椿さんを見て、


失礼ながらも、


可愛いと、思った。


「っ!?」


椿さんの息を呑む音がずいぶん近くで聞こえた。
"目を開ける"と眼前には涙の止まった椿さんの見開かれた瞳があって、
あ、泣き止んでくれた。
なんて思って、"唇を離した"


「ねぇ、椿さん。私の事、まだ好きですか?」


今度は優しく、真面目に聞く。

一瞬、椿さんの瞳が揺れる。

と、思ったら間をおかずに椿さんは、首を横に振った。

ズキリと、胸が痛むが、私も間をおかずに質問する。


「じゃあ、さっきのキスの意味は?」


首を横に振る。


「じゃあ、結婚したい人ができたって言ってましたけど進展は?」


首を横に振る。


「前好きだった会社の上司、近藤さん?じゃないんですか?」


首を、横に振る。


「近藤さんと、両思いだと思ってたんですけど」


首を、横に、振る。


「違うんですか?」


苦しい。


壊れた機械のように首を横にしか振らない椿さん。


苦しい。


質問くらい答えてくれてもいいじゃないか。


苦しい。


椿さんの小さな拒絶でこんなにも苦しい。


あぁ、もう限界かも。


「なんで、何も答えてくれないんですか」


私の頬を冷たい何かが伝う。
無意識に椿さんの服の裾を掴み、椿さんの肩に頭を乗せた。

「なんで、あの日私を突き放したんですか」

その言葉にやっと椿さんは別の反応をした。

ゆっくりと脇の下からすくい上げるように抱きつかれ、吐息が耳に触れた。







「私じゃね、楓を幸せにできないの」






……

なんだそれ
なんだよそれは
そんな
りゆうで
つきはなしたってのかよ


怒りから、強く歯を食いしばり、椿さんの肩を掴み強引に距離を開ける。

涙が溢れる。
それでも、これだけは言いたかった。


「椿さんがっ!!私の幸せを決めないでくださいっ!!!」


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category:  第2章諦めきれなくて

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