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A loved one

女性同士の恋愛を取り扱う百合小説サイトです。オリジナル小説で主に年上×年下を取り扱っています。無断掲載・無断転載・複製・配布等は禁止です。以上の事を踏まえた上でのご入場宜しくお願い致します。

第1章 出会い⑥ 


講義後、急いで外の喫煙所に向かうと既に草川さんが煙草を吸って待っていた。

「あ、すみません待たせて」
「今来たとこだから大丈夫。楓も1本吸えば?」

そういう草川さんはまだ長い煙草を口に持って行きながら問う。

「あ、じゃあ遠慮なく」

お言葉に甘えリュックから煙草を取り出し火をつける。

しばらく2人の間には会話は無く、他にいたグループの話だけが聞こえた。
煙草の灰を落とすと同時に、

「楓……未成年だよね?」

ピクリと、再び口元に持っていきかけた手が反応する。

「草川さんもそれ、言いますか……」
「"も"って事は他にも誰かに言われたのね」

まぁまだ大学1年生、19歳ですからね。
初めて霞の前で吸った時も言われたよ。

『あれ、楓って未成年だよな?……え、浪人?』

あの時の驚いた顔は未だに思い出せる。

「まぁ、そんな感じです」

少し苦笑いを含めながら煙草を口元に持っていく。
そんな他愛も無い会話をしばらくして喫煙所を2人で出る。

「で、どこか行くの?」

草川さんが問う。

「それでもいいですけど普通にそこらへんのベンチでも済むような用事ですけどどっか行きたいですか?」
「んーじゃあラウンジでいいね」

そう言い大学の敷地内にあるフリースペースのラウンジに足を向ける。

「さて、早速本題に入る?それともくだらない会話でもする?」

ラウンジの席に着き草川さんはそう切り出す。
そのサバサバした問いに思わず苦笑する。
そんな2択だったらもはや前者しか選べないじゃ無いか。

「じゃあ本題で」
「わかった。じゃあちょっと待ってて」

そう言うと草川さんは鞄から財布を取り出しどこかへ向かう。
それほど時間も経たずに、

「お待たせ」

そう言いながらイチゴミルクのパック2つ机に置いた。

……まさか草川さんはイチゴミルクが好きなのだろうか。
いや私は嫌いってわけじゃ無いが、こういう場面では缶コーヒーとかその辺じゃないの?

「イチゴミルク嫌いだった?」

しばらくイチゴミルクを見ていたせいか草川さんが少し困ったような表情で聞いてきた。

「あ、いや別に嫌いじゃないんですけど、こういう時って缶コーヒーとかじゃないんですね」

そう笑いながら言う。


「コーヒー飲めない」


……あ、そうですか。


「イチゴミルク大好き」


ストローを咥えながら笑顔で言う草川さん。


……あ、危ねぇ。

落ちるとこだった。

恋という深ーい落とし穴に。

なんだこのギャップは。
見た目はクールで超絶大人っぽいのにコーヒー飲めずにイチゴミルクが大好き、だと?
絵に描いたようなギャップじゃないか。

私もストローを挿し「いただきます」と呟き、口に咥える。
イチゴミルクの甘い味が口の中に広がる。
うん、久しぶりのイチゴミルクも悪くない。

「それで?」

イチゴミルクのパックから手を離して机に身を乗り出す草川さん。

「あぁ、話っていうのは私の過去、っていうほど大して昔のことのことじゃないんですけど、話そうかなぁって」

その言葉でピクリと草川さんの眉が動く。

「いいの?」

その声は、私のことを心配している音で溢れていて、改めて草川さんの優しさに救われる。

「はい、ここまで心配されて話さない程の事でもないですから」
「そう……じゃあ聞かせて」

私はイチゴミルクを1口飲んで話し始めた。



ズズッと音を立て始めたイチゴミルクを一気に飲み干して草川さんの反応を待つ。
草川さんは思案顔ですっかり空になったイチゴミルクのパックを解体している。

沈黙が、続く。

不意に平らにしたいちごミルクのパックを近くのゴミに投げ捨てる草川さん。

見事入る。

草川さんに目を戻すと思わぬ真剣な眼差しで息を飲む。

「別に無理して忘れなくても良いんじゃない?」
「ぇ?」

唐突の草川さんの言葉はあまりにも予想外で聞き返すことしかできない。

「失恋っていうものはさ、引きずって引きずっていつの間にか思い出になるものだからさ、楓はまだ半年くらいしか引きずってないじゃん。もっと引きずってなよ」

なんていうアドバイス。

その引きずることが苦しいから早く思い出にしたいのに草川さんはまだ引きずってろと言うのか。
しかし草川さんは「それか」と付け足す。




「それでもやっぱり苦しいなら、私が落としてあげようか?」




こうか ばつぐん だ!!

手に顎を乗せ挑発的な笑みで私を見る草川さん。

それでも、

「……年上に弱いんですからやめて下さいよそういうの」

冗談のように笑いながら流すことに成功した!

その反応を見て草川さんは一瞬目を見開くが、クスッと笑い、

「そうね、まぁそれはまた追々」

追々の意味がちょっとよくわからないゾ。

「と、まぁ、そんな感じの私の過去でしたーって話だけです」

私も潰したイチゴミルクのパックをゴミ箱に投げ捨てる。ハズレ。
渋々立ち上がり拾い捨てる。

「そう、じゃあ帰るわね」
「はい、ありがとうございました」

鞄を持ち帰る姿を見送る。
なんだか急いでいるような気がするが、まさか用事があったんじゃ……
いや、でも草川さんだったら言うだろうし……あれが普通の歩き方なんだ!と1人納得して私もバックを背負い大学を出る。

まさか、本当にこの日、草川さんが用事をすっぽかしてまで私の話を聞いてくれた事に私は気づく事はなかった。



***



ガタンゴトン、と定期的に揺れる電車。

「次はー〇〇ー次はー〇〇ー」

最寄りの駅がアナウンスされ荷物を手元に寄せ、降りる準備を始める。
プシューと音を立てながら開いた扉から吐き出されるように降りる人に紛れて私も降りる。
人の流れに沿うように改札を抜ける。
ふと、空を見上げると、曇天模様。

「雨、降りそう……」

ぽつりと言葉をこぼし、いつもの曲がり角を"反対"に曲がった。
しばらく歩いていると、ぽつりと頬に雫が一滴。
続いて目の下に一滴。

「降ってきた」

ヤバい。傘ない。走らなきゃ。
そう思い走り出そうとしたところで気がつく。


「ここどこ……」


あれ?
え?
辺りを見渡しても家の近くの景色ではない。
ただ、見覚えはある。

確か、ここを曲がったら……

やっぱり……

私は目の前の見覚えのありすぎるマンションを見て、本降りになり始めた雨の中立ち尽くした。




———椿さんの家




何故か分からないけど、私の足は家とは反対方向の椿さんの家まで向かった。

放課後に椿さんの話をしたからだろうか。

疑問が尽きないが取り敢えず近くの屋根のある場所で雨宿りする。
数秒だったがバケツをひっくり返したかのような濡れ方だった。
もうここまできたら雨宿りしないで走って帰ってもよさそうだ、と思い覚悟を決める。

「よし」

椿さんの家がすぐ近くにある、という事に後ろ髪を引かれる思いで屋根から抜け出して走り出す。
バシャバシャと豪快な音を立てながら走る。
駅の方から傘をさして歩いてる人がいる。
はて、今日の天気予報は雨だったかな、とかそんな今更な事を考えながらすれ違う。
その瞬間





「楓?」





ザーと辺りは音で包まれてるはずなのに、今にも消えそうな、その儚い"鈴の音"は私の耳に届いた。


足を止めてはいけなかった。

その音は私の気持ちを掻き乱す音だって分かってた。

でもその音は私に幸せを届けてくれる音でもあった。

だから———



足を止めてしまった。

雨に打たれるのも構わず、私は止めた足を再び動かす事ができないでいた。

踏み出す事も、

振り返る事も、

やがて、私の体を打っていた冷たい雨はぼつ、という鈍い音に変わると同時に、すぐそばに人の温もりが感じられる。

「やっぱり楓だ。どうしたのこんなところで。びしょ濡れじゃない。うち寄りなよ」

あぁ、やっぱり貴女は、いつ、どんな風に会っても、どんな別れ方をしても、いつも通りなんですね。
私も、いつも通りにやらなくちゃいけないんですかね。
静かに、深呼吸して、笑顔の準備。
そして、
勢いよく振り返って、


「お久しぶりです椿さん!お家上がらせてもらってもいいですか?」


いつも通りの私で、私は楠見椿と再会した。

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