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A loved one

女性同士の恋愛を取り扱う百合小説サイトです。オリジナル小説で主に年上×年下を取り扱っています。無断掲載・無断転載・複製・配布等は禁止です。以上の事を踏まえた上でのご入場宜しくお願い致します。

第2章 男の子な転校生③ 

 「おはー」「あっおはよー」「おはよ……」「うす」
パラパラと返ってくるおはようの返事。

その中を私は突き進んで一直線にある机に向かった。

「おはよう、優輝君」

これでもかって位爽やかな笑みで優輝の肩に手をかける。
優輝はびくりと肩を揺らしながらぎこちない笑みでおはようと言った。

「楓はさ、転入生の優輝君と仲良くしたいんだよ。ってことでちょっと面貸せ」

唐突な私の申し出に優輝は頷く他なかった。
なんて言うか、きっと私の周りにはドス黒いオーラが漂っていたに違いない。

そのまま肩に手をかけながら廊下に連れ出す。
秋の終わりごろになった今では廊下は少しひんやりとしていた。

「それでさ、優輝君。どんなお話ししようか?」

ニコリと肩にかけていた手をさりげなく首に回してヘッドロックの準備。

「お話の前にこの手を放すのと、その気持ち悪い呼びk……いてててっ!痛い!ちょっごめん!すみませんでした!痛い!」
「それで、優輝君。どんなお・は・な・ししようか?」
「えと、じゃあ、修学旅こ……いてててててっ!なんで!?ちょっだからすみませんでした!えっとあれっすよね!?電車ですよね!?あれは本当に偶然というかなんというか――」

 やっと意味を理解した優輝を放さずに、偶然という言葉を聞いてもう一度力を入れようとしたとこに、声がかかった。

「楓おはよ」

 ふと頭をあげると朱莉が頬笑みながらやってきた。

「お、おはー」
「なになに、楓もう転入生と仲良いの?朱莉も仲良くなりたいな」

 あぁ、今日はそっち系ね。
この子、何か知らないけど日によって態度とか声が違うんだよ。

いつもは、明るい!って感じの普通な感じなんだけど、今日のやつは大人しい系で声もなんか可愛い感じの声を意識してるような声で、正直気持ち悪い。

「なんのお話してるの?」
「え、あーこいつ修学旅行ぼっちだから班入れて欲しいって。楓だけじゃ返事できなかったから丁度良かった。いい?」

 なぜか咄嗟の嘘をついてしまった。
いや、別に隠すようなことは何もしてないような気がするんだけど、なんでかね。

「うん、いいよー。棚橋 朱莉だよ、よろしくね」
「えっあっよろしく。柏原 優輝です」

 おい、どういうことだ、と優輝から視線が痛いほど伝わってくるが無視した。

「じゃー優輝君との交友も深まったことだしそろそろ教室に入りますかぁ」




 その日の帰りに椿さんに出会った。

「再来週から修学旅行なんですよー」

 私の唐突な話の振りに、特に驚く様子もなく、興味津津って訳でもなく、かといって興味が無さそうという訳でもなく、椿さんは私の顔を見ずに答えた。

「へぇ、どこに行くの?」
「長崎なんですよ、本当は沖縄だったんですけどね」
「あららー、残念だね」

 そう言うと椿さんはケータイを取り出して時間を確認した。

 最近の椿さんはいつもこうだった。
別に上の空って感じではないのだけれど、なんか素っ気無いというか、でもしっかりと私の話に返してはくれているのだ。

 では、何が問題かというと、それは私にも分からなかった。
ただ漠然となにか違うと感じていた。

 っとふいに椿さんはここに戻ってきた感じで話を続けた。

「もしかすると私の会社が楓の学校の添乗員かもしれないわ」
「え?どういうことですか?」
「私の同僚が再来週長崎に行くって言っていたから、勿論仕事でね」

 え!なにそれ知らない!
確かにしおりとかのバス座席表で添乗員とか書いてあったけど、まさか椿さんの会社からとは!
ってか椿さんそういう仕事してるんだ、椿さんみたいな美人さんが添乗員やってたらすぐに男子校生の毒牙にかかってしまうんじゃなかろうか!!

「え!それはすごい偶然ですね!わぁー椿さんの同僚さんに会えるー」

 わーい、と喜びを表した私だが、椿さんはふふっと笑っただけだった。

 私はどうにかして椿さんの違和感の原因を聞き出したい。
しかし、たかが高校生に心配される社会人の心境が計り知れない。
それに私の会話力でうまく聞き出せるとは到底思えない。
しかも、私と椿さんは長年一緒にいたという仲でもなく、つい最近出会ったばかりの関係だ。
その関係も、今週の日曜日のお礼が済むことで無く、なっ、て……あ。


そうだよ。
 椿さんとは痴漢から助けてそのお礼をされるだけの関係。
そのお礼が無くなってしまったらこの関係は維持する必要性が無いのだ。

そうか、椿さんは優しいからお礼が済むまでの間こうして我慢して私なんかと関わってくれているんだ。
そりゃそうだよ、私なんかといたって楽しくない、喋るのが苦手なせいでしょっちゅう無言の時間だってあった。

 疲れてしまったのだろう。
お礼までの辛抱だったが遂に耐えきれなくなってしまったのだ、だから最近の椿さん……いや、楠見さんは感じが変わったと感じたのだろう。
本当の感じに戻っただけに私は気がつかなくて。



 私はバカだ、こんなことに気がつくのにも遅れて、楠見さんの優しさに頼りっぱなしだった――



「じゃあね、楓」
「え?あ、え?」

 突然楠見さんに声をかけられた。
辺りを見渡すといつの間にか最寄りまで来ていた。

え!?ってことはここに来るまで無意識だったの!?
もしかしてずっと無言だったのだろうか!?
最後の最後まで私はつまらない人間として楠見さんの頭の中に残るのだろうか、いや、記憶に残ることさえないのかもしれない。

「大丈夫?」

楠見さんは数歩離れた所から心配してきた。
 前は目の前にいたのに……

「あ、いえ、大丈夫です。すみません。さようなら」

 私は楠見さんの優しさに耐えきれなくなって顔を合わせずにそそくさと駅の改札から出た。



 その目をしっかりと見ていれば違う未来があったかもしれないのに
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category:  第2章男の子な転校生

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