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A loved one

女性同士の恋愛を取り扱う百合小説サイトです。オリジナル小説で主に年上×年下を取り扱っています。無断掲載・無断転載・複製・配布等は禁止です。以上の事を踏まえた上でのご入場宜しくお願い致します。

第18章 束の間の幸せ① 



そして、あの日からそれらしい雰囲気になる事なく、椿さんと付き合ってから1ヶ月半が過ぎた。


もう、学校も卒業シーズン。

高校生最後のテストも終わり、自由登校になり、家でダラダラとした生活を送るようになっていた。


昼過ぎに起きては夕方からバイトをし、また昼過ぎに起きてはバイトの繰り返し。




朝の椿さんとの登校が無くなってから会う回数が極端に減った。




マズイとは分かっている。


1ヶ月半で月2程度しか会ってないカップルなんていないだろう。


ただ、相手は社会人で時間も取りづらいから仕方がないのかもしれない。



会えない理由があっても、不安は募る一方だ。



バイトの休憩中に連絡が無いか携帯を開く。

メールが一件。





椿さんから。





『バイト後にうち来ない?』


『行きますっ!』


久しぶりのお家招待だ!


現金なもので、さっきまでの不安を胸の底に押し込み嬉々として返信する。

すぐに返信は来て、待ってるわ、の一言にまた喜びを隠せず、休憩上がった後もバイト後の事を思うと頑張れた。







ピンポーン

つい、インターホンを強く押す。
強く押したところで椿さんに早く会えるわけでも無いのに。


ガチャリ


インターホンからの応答はなく、目の前の扉が開かれる。










「ごめんね、急に。上がって」

























違和感を感じた。

椿さんの姿を見た瞬間、違和感を感じた。

廊下を歩く椿さんに、違和感を感じる。

声に現れてなくても、何かが変わってるわけではないが、違和感を感じた。



「……お邪魔します」



その違和感を振り払って私は椿さんの家に上がった。



家の中はこの前と変わらないように見えて、何かが違う。

その何かをさりげなく探し、見つけた。




写真だ。




写真がない。

写真が置かれていた場所がポッカリと明らかに何かがあった空間が存在する。


私がこの前気にしていたのがバレていたのだろうか。

それとも何かがあったのだろうか。






頭の中に疑問しか浮かばない。



心の中に不安しか芽生えない。



恋人は、所詮他人なのだから、信じなければ全てを疑ってしまう。

そう、分かっていながらも、疑問は尽きないし、不安も晴れない。


「楓?どうしたのボーッと突っ立って」


不意に後ろから声が掛かる。

椿さんはキッチンからコーヒーの入ったカップとコーヒーの入ったグラスを持って出てくる。


「あ、あぁ、ちょっと久し振りなので緊張してました」

冗談ぽく、笑いながらソファに腰掛ける。


椿さんはコーヒーを机に置き、どっちがいい?と尋ねる。


「え、それ、両方コーヒーですよね?アイスかホットって意味ですかね?いやいやそれ以前に私コーヒー飲めませんよ!」

そんな私の抗議など御構い無しに椿さんはニコニコと見つめてくる。



これは、どっちか決めないと終わらないやつだ……

「じゃ、じゃあ冷たい方で」

「あら、ホットで温まると思ったのに」

「椿さんが温まって下さい」


熱いやつだったら一気に飲めないでしょう。
冷たいやつを一気に飲み干せば苦味は一瞬なはずだっ!


ありがとう、そう言いながら椿さんはコーヒーをすする。

はぁーと幸せそうな顔で飲む。
一体コーヒーのどこが美味しいのか、全然わからない。


私は意を決して、グラスを持ち上げる。




一気に一気に一気に一気に……

グラスを口に近づけ一気に傾ける。







あれ、匂いがコーヒーじゃなーーっ!!


その液体が喉に当たった瞬間弾けるような刺激が口の中に広がり、予想もしてなかった刺激と甘みに思わず咽せる。

「ぐふっ、ごふっ、げふっ……椿さん……これ、炭酸飲料じゃないですか……」

口元を押さえて椿さんを恨めしく見る。

コーヒーだと思った炭酸飲料を何の準備もなく一気飲みしようとすれば予想外の刺激に咽せるのも当然だ。


「ふふっ、両方ともコーヒーだなんて一言も言ってないわ」


確かに言ってないけどー!
私が勝手に思い込んでただけですねー!

もー、何でこんな可愛いことするかなー!

炭酸飲料とコーヒーを見分けられない私も私だけど。


椿さんはもう一口コーヒーをすする。


「楓も1ヶ月後には大学生かー」

「へへっ大学デビューで椿さんを驚かしてやりますよ」

ニヤリと口角を上げてドヤる。

「なぁに?やっとお化粧とかするの?」

「やっとって何ですか!しませんけどね!」

「なーんだつまらない。まぁ楓はお化粧しなくても可愛いけど」



サラッと言われ慣れていない言葉を言われる。

「っぁ、椿さんの方が可愛いですよ……」

いきなりの椿さんの爆弾発言に上手い言葉が見当たらず、ボソッと真実を置くことしかできない。


喋り方や、服装、髪型で、格好いいなどはよく言われ、男にも間違われる位だ。





そんな中、私に可愛いという人は椿さん、ただ1人だった。




嬉しくない訳がない。




椿さんだけが、私を女の子扱いしてくれてる気がして嬉しかった。

ただ、そんな恥ずかしいことは本人には絶対に言わない。



しばらく、他愛もない話をすると椿さんはコーヒーのおかわりか、立ち上がりキッチンへと消える。


「はぁーー」


今日も、やはりないのだろうか。

恋人同士でしか行えないことを。



もうこれだけなかったら諦めが大きい。

でもせめて、なにか物とか、密かに、恋人を主張する確かなものが欲しい。




ふと、目の前の机の上のチラシの小さな山から見える紙に目が止まる。

チラシを手に取り見る。




アロマキャンドルの広告だ。




名前を彫ることができ、友人や恋人のイニシャルを彫ったりするやつらしい。




ーーーこれなら、身に付けずともひっそりと恋人を主張することができる。

思わず、キッチンにいる椿さんに呼び掛ける。


「つばーーー」

「楓ー」


重なるように、キッチンの死角から椿さんが呼び掛ける。

その声は、いつも通りの鈴の音のような凜とした声で、


























































「私たち、別れよっか」




カサリ、とチラシが床に落ちた音が部屋に静かに響いた。







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category:  第18章束の間の幸せ

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