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A loved one

女性同士の恋愛を取り扱う百合小説サイトです。オリジナル小説で主に年上×年下を取り扱っています。無断掲載・無断転載・複製・配布等は禁止です。以上の事を踏まえた上でのご入場宜しくお願い致します。

第17章 温もり④ 

こんにちは、颯です。

年が、明けましたね。

この挨拶も二回目です(しみじみ)

今年もあらぶどついでに颯を宜しくお願いします。



***


「お邪魔しまーす」

「どうぞー、上がってー」

先を歩く椿さんはパチッパチッと電気をつけながらリビングの方へ行く。



やはり、人の家というのは緊張する。


それが恋人、椿さんの家だ。
心臓が破裂しそうだ。


きちんと靴を端に揃えてゆっくりと椿さんの後について行く。


廊下を抜けると、10畳くらいの広さのリビング。
一人暮らしには少し大きいソファや立派なテレビ。
大人しい感じの色合いで合わせたような部屋。



椿さんっぽい。



「座ってて」

椿さんはそう言うと隣の部屋に行く。



その、背を追った手前の棚の上に置いてある写真立てに目が行く。

手に取り写真を見る。

大学の卒業式の写真だろうか。
袴姿の人たちが3人写っている。


真ん中に椿さん、左手側に多分これは茜さん、そして右手側には短髪で長身の活発そうな男性が椿さんの肩を組んでいた。



モヤッ



胸の奥に違和感を感じる。


彼氏……だろうか。

それはそうだ。
だって椿さんはあんなに綺麗なのだ。
別に楓フィルターとか無くても殆どの人が可愛い、綺麗、と言うくらいだ。



彼氏がいて当たり前だ。

むしろ今、なんでいないのか不思議なくらいだ。


「お待たせ……ってどうしたの?」


そこに椿さんが隣の部屋、寝室だろうか、から出てくる。

Tシャツにゆったりとしたショーパンというラフな格好で……ってラフ過ぎない!?

え、初めて家に招いた人の前に出る格好じゃなくない!?

「え!?てか寒くないんですか!?」

冬だよ今!冬!

椿さんはいたって真面目に、私年中こんな格好よ。なんて言いながら私の手元を見る。

「あぁ、これね。これは大学の卒業式の写真よ。見てわかる通り真ん中が私で隣が茜、その反対がーーー」


椿さんは気にする様子もなく写真を覗き込み、名前を言っていってくれる。


椿さんは男の人を指差し、












「ーーー茜の彼氏よ」








間がーーーあった。



そもそも、茜さんの彼氏だったらこの並び方っておかしい。

カップルを引き裂く様に真ん中にいる椿さんの位置。





聞きたいことは沢山あった。
言いたいことも沢山あった。





でも、それらを飲み込んで、



「へぇ!茜さん中々のイケメン捕まえたんですねぇ!」


ニヤリとふざけた感じで笑い写真立てを棚に戻す。




これは甘えじゃない。























嫉妬だ





あの写真で肩を組んでる男性に、
今、椿さんの頭を占めた男性に、








醜く嫉妬して、


椿さんへの強い独占欲を抱く。






自分でも、この独占欲が怖い。


頭の中にまでいる男の人に嫉妬してるだなんて気が付きたくなかった。


こんな気持ちを知られてしまったら、引かれるに、決まってる。





椿さんは右手を首に当て、ニヤリと笑う。


「そうなの、茜って彼氏の前では案外乙女なのよ」

「そうなんですか!想像できないですね」


椿さんはそのままキッチンへと入ると、


「お茶、水、コーヒーどれがいい?」


なんて、子供をもてなす気が全然無い三択で吹き出す。


「じゃあお茶でお願いします」


そう言ってしばらくするとキッチンから椿さんが戻ってくる。

椿さんは、私を見て、





「なんで立ってるの?座って?」


「あ、あぁ!すみません失礼します」


すっかり座ることを忘れていた私は、一人暮らしでは大きめの、2人掛けソファに座る。
その横に椿さんも当然のように座る。



ドッドッドッ



この、触れるか触れないかの距離。
微かに鼻を刺激する香り。





心臓が鳴り止まない。


「…………」

椿さんは何を言うでもなくコーヒーを一口飲む。




何か、

何か喋らなければ、

沈黙が長くなればなるほど、














私が如何につまらない人間か知られてしまう。


今まで、特に予定の無い時間を過ごすことがなかったから、

道化じみた振る舞いで、

道化じみた会話でやり過ごせた。




だから、

何か喋っていないとーーー


















「ーーーこうやって2人でゆっくりとした時間を過ごすのも良いわね」


ボソッと少しの雑音があればかき消えそうなくらいの声で椿さんが言った。





「ーーーぇ」


しっかりと、その音は聞こえたのに思わず疑問の声が漏れる。

椿さんはただ、幸せそうにコーヒーを口に運ぶ。





その言葉に、





私は、






頬を赤くする。









何度、私はこの人に恋をしなければならないのだろう。




恋に恋を重ね、

私は何重にも恋をする。




恋愛は惚れたもん負けと言うが、まさにそれだと思う。





この人には絶対に敵わない。


静かで、ゆっくりとした時間が、良いだなんて、今まで一回だって思ったことはなかった。

常に、音がなければ私はビクビクと怯えてしまう。

音が無い、というのが怖かった。





でも、


椿さんの言葉で、


私の、物の捉え方が変わり始めた。





冬になれば、人肌が暖かくなったように。



沈黙になれば、心地良い時間になった。







沈黙は、怯えなくて良いのだ。







「楓はさ」

不意に、その沈黙が破られる。



























「キス、したことある?」


「うぇえ!!??!?!??」


ガタッ

「いっ!!?」

驚きのあまり足を思いっきり机にぶつける。

幸いにも机の上の飲み物は大きく波打つのみ。

「いきなりっ!なんですか!?」

ぶつけた足の痛さに顔を顰めながら椿さんに問う。


「いきなりじゃないわ。恋人同士なら当たり前のことよ」


慌てた私と対照的に椿さんは至って冷静だった。

コーヒーを一口飲み返事を促す様に私に視線を向ける。










「…………そりゃ……した事、ないですよ……」


恥ずかし過ぎて顔から火が出そうだ。

て言うか、なんで、こんな事聞くの!?


当たり前の事なのか。
恋人同士なら初めてキスする前は聞くのか?


いや……聞かないだろ。



私の返事に椿さんは、そう……と言ったきり黙ってコーヒーを飲んでいる。

そう……じゃないよ!
え!?なに!?
さっきの質問の意味は一体何だったの!?


悶々と、脳内で意見が飛び交っていると、


コトリ、と


椿さんが机にコーヒーを置いた音が静かな部屋にやけに大きく響いた。

椿さんはサラッとした髪を耳にかけ、横目に私を見る。








その、色っぽく艶やかな視線にドキリと心臓が跳ね上がる。








髪を耳にかけた手をゆっくりと私に近付けて、頬を優しく撫でる、と




























「じゃあ、ファーストキス、してみる?」









ドクンドクンドクンドクンドクンドクン


聞こえてしまうんじゃないか。

拍動の数は決まっていると言うが、このままでは寿命が縮みかねない。




ゴクリと、唾を飲み込み、近くにある椿さんの顔を見れずついギュッと目を閉じる。

それでも、椿さんが近づいているのを感じる。




椿さんの、吐息が、かかるーーー






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category:  第17章温もり

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