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A loved one

女性同士の恋愛を取り扱う百合小説サイトです。オリジナル小説で主に年上×年下を取り扱っています。無断掲載・無断転載・複製・配布等は禁止です。以上の事を踏まえた上でのご入場宜しくお願い致します。

第17章 温もり③ 



「楓」



帰りの駅のホームで呼び掛けられる。
その声に反応して私は振り返る。


そこには鼻の先、頬を赤くし小さくはにかんでいる椿さんがいた。

先週から東京にも雪が降り始めた。
チャリ通だった私は電車通に変え、再び椿さんと通ったり帰ったりしていた。



椿さんは私の隣に立つと、自然に私の左手をキュッと握り、寒いね、なんて言いながら微笑む。



私は暑いです。



椿さんに握られた左手からみるみるうちに熱が体全体に伝っていきぐるぐるに巻いたマフラーを取りたくなる衝動に駆られる。

なんでそんなナチュラルに手をつなげるんですかねぇ?
大人だから?大人だからですか?


あぁ、もう、暑い。


その、暑さが、付き合っているという実感を何度も私に感じさせる。




クッと微かに椿さんの繋いだ右手に力がこもる。



「楓、この後空いてる?」







…………あれ?もしかして、椿さん、



「なんか緊張してます?」


ギュウゥ


「いでで!痛い!椿さん痛い!」

繋いでいた手が力強く握られる。
少しでもその力から逃れようともがくが、痛い。


椿さんはニッコリ満面の笑みで顔を近づけ、

「そういうの気が付いても言っちゃいけないんだよ?分かるー?」

「はい!分かりました!だからはよ離して!」


そう、私が言うと、



ふと、椿さんは笑みを消し、









「本当に離していいの?」


なんて意味不なことを聞く。
その時はその意味なんて全然分からなくて、

「勿論です!痛い!離して!なんでそんな握力強いの!」

すると、パッとようやく手を離してくれて痛みから解放される。



あぁー痛かった、椿さん握力一体いくつなんだ……なんてブツブツ言う私にふふっと微笑む椿さん。





ぶるっ




寒い。

さっきまであんなに暑かったのになん、で……?













あ、



やらかした。



気が付いた時にはもう遅くて。



私の左手にはもう何も重なっていなくて。






さっきの椿さんの問い掛けの意味に気が付く。



『本当に離していいの?』



ちらりと椿さんの右手に視線を向けると、体の横に無防備にぶら下がっている。

わ、私から握ればいいんだ!
そう!握るだけだ!


無意識に、ゆっくり、そうっと椿さんの右手に近づく。



あと、あと少し!













「楓?」

「あ、袖に毛がついてますよ」



コノヤロォォォォォォォ!!!!!!

何が袖に毛がついてるだ!!
このチキンめ!
意気地無し!



はぁ、寒い。

仕方なく、コートのポケットに両手を突っ込んでマフラーに顔を埋める。



人の温もりが、あんなに暖かいだなんて知らなかった。

前までは、これだけでも十分に暖かいと思っていたのに、





物足りない。


椿さん、と言う存在に出会ってしまったことで、








私は強欲になった。


椿さんは私と手を繋いで暖かくなったのだろうか。

手を離してから、寒くなったのだろうか。

椿さんにも、同じ事を思って欲しいと言う欲が胸の奥に芽生える。




手を離して後悔した。



そう思って欲しかった。

でも、椿さんはその事について一向に声をかける事も、手を差し出す事もしない。




手が離れて寂しいと感じているのは私だけのような気がして無性に悲しくなる。



大人と、子供の、差なのだろうか。



大人には、余裕って物があり、
子供には、我儘って物がある。




大人はその余裕で、自分の気持ちを隠して、
子供はその我儘で、自分の気持ちを曝け出す。











ーーー私が子供だったらどんなに良かったか。


私が子供だったら、ここで正直に手を繋ぎたいと、我儘を言えばいい。



でも、自分の気持ちを無理に隠してきた、
人に甘える事を忘れた、私は、








大人でもなければ子供でもなかった。


そんな中途半端な私には、大人の余裕もなければ子供の我儘もない。
今まで通り、無理に我慢するしかないのだ。


















クスッ

と私の隣で小さな笑い声が聞こえた。

顔を上げると、













椿さんの女神のような笑みと細長い指先があった。
























「隣に恋人がいるのにポケットに手を入れるのはおかしいんじゃない?」


「ぁ………っ……」


その、笑顔を見て、





この人の前なら、無理に我慢しなくてもいいのかもしれない、と思った。







ーーー暖かいね








何てさっきとは反対の言葉を言いながら微笑む彼女

この人なら、私の不恰好な甘えだって笑って許してくれる。







ーーー私は暑いですけど







そう、思ったから、







ーーーえ、じゃあ繋ぐのやめる?










まだ、目を見て言うのは恥ずかしいから、顔を背け、












ーーーでも、嫌じゃないです







少しずつ、甘えと言う我儘を言っていこうと決めた。























「顔赤くして言うのは反則よ……」


その後、不自然に顔を逸らしボソリと言った言葉は私には聞こえなかった。







最寄りの駅についたところで、思い出したように椿さんが声を出す。

「あ、そう言えば、楓、この後空いてる?」

それは先程の質問。

「はい、特に用事はないですね」

「そ、じゃあうち寄っていかない?」

「えーいいんですか?じゃあ……えぇ!?椿さんの家!?え、マジっすか!?」

漫画のような反応をしてしまうのも仕方が無い。
なんたって椿さんの家だ。

「勿論。楓が良ければだけど」

「えぇ!行きたいです!行きましょう!」

私が目をキラキラさせて言うのが可笑しかったのか、クスッと笑い、じゃあ行こうか、と言いながらいつもの分かれ道を2人、同じ方向に曲がった。




そう言えば椿さん、緊張してた。

やっぱ、恋人の家に行くってことはそれっぽいこととかあるのかなぁ。

前に付き合っていた人はいたが、私はファーストキスすらまだだ。
何も知らない私は恋人同士でする行為に興味が無いわけでは無い。

むしろある。



椿さんは大人だから、

そう、私の中で決められたせいで、微かな期待を胸に椿さんの家に上がった。


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category:  第17章温もり

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