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A loved one

女性同士の恋愛を取り扱う百合小説サイトです。オリジナル小説で主に年上×年下を取り扱っています。無断掲載・無断転載・複製・配布等は禁止です。以上の事を踏まえた上でのご入場宜しくお願い致します。

第16章 鈴の音③ 



胸が、苦しい。



心臓が、張り裂けそうだ。



喉が、潰れてるんじゃないかってくらい息ができない。



肺が、酸素を求めて悲鳴をあげる。



周りで誰かが、叫んでいる。



遂に、目的の扉が視界に現れる。



精一杯、少しでも早くと言うように、扉に手を伸ばす。



掴む。



思いっきり引き開ける。



叫ぶ。



ここが何処だろうと、力の限り叫ぶ。























「椿さん!!!!!!!!」


















そして訪れる静寂。


私の息切れしている音しか聞こえない。




ゆっくりと膝から手を離し顔を上げる。




そこには目を見開いて上半身を起こしている椿さん。手元には赤いクマのキーホルダー。



そしてその向かいに同じように目を見開いて上半身を起こしている田中さんと佐藤さん。





……大部屋って忘れてた。





「い、一体どうしたの?」


椿さんが恐る恐るといった風に問いかける。


「はぁ、はぁ、っ、はぁ……何で、はぁ、手術の事、はぁ、はぁ、言ってくれなかったんですか」

「っっ!!!」


椿の表情は変わらなかったが、ぐっと手を持っているキーホルダーを強く握った。

「なん、で知ってるの?」

「看護師さんに聞きました。何で、教えてくれなかったんですか?」

「そ、それは……」


追い詰めるように、一歩一歩近付く。

椿さんは耐え切れず私から目を逸らし俯く。




シャァッ




病室にカーテンを閉める音が加わる。


私は椿さんの周りのカーテンを閉め、2人という状況を作り出す。


それでもまだ俯いている椿さんの顔を覗くように屈み笑顔を浮かべる。












「なぁーんて、冗談ですよ」












「……え?」


椿さんのサラサラの髪が微かに揺れる。


「結果、こうして手術前の椿さんに会う事ができたんです。気にしてません」


私は丸椅子を寄せ跨ぐように座る。


「ごめんなさい……」

椿さんはそれでも申し訳なさそうに俯いたままだった。

仕方がないという風に私はため息をつく。


「じゃあ、代わりと言ってはなんですけど、楓の話、聞いてくれませんか?」


私もポケットからピンクのクマのキーホルダーを取り出し両手で軽く包み込む。
クマから、勇気を貰うように。







































「私は、椿さんのことが、好きなんです」























ハッと息を呑む音が聞こえる。
























「大好きなんです」


















「苦しいほど、大好きなんです」























「一目見たその瞬間から、私は椿さんに恋してました」















「椿さんの顔や声、長い黒髪や細長い指、自分より他人を思う優しさ、不安を取り除いてくれる笑顔、その全てが大好きなんです」















「こんな楓を気持ち悪く、思いますか?」















「それとも」














「こんな楓を受け入れて、くれますか?」














怖くて、顔を上げられない。





手元でクマさんを動かして気を紛らわすことしかできない。



















「ねぇ、楓」














つい、顔を上げてしまったのは椿さんの声が予想よりも柔らかく、温かい声だったからか。




椿さんの顔は、たまに見る、何かを愛おしむ様な顔で、目で、私を見つめていた。














「私ね、そんなに楓が苦しんでいたの、知らなかったの」

















「私ね、私が楓を苦しめてる元凶だって、知らなかったの」
































「それでもーーー」





























ガララ




「楠見さん、手術の最終確認をします。申し訳ありませんが親族でない方はお帰りください」


シャァッとカーテンを開けながら淡々と作業をする昨日の手術のことを教えてくれた看護師さんが言う。

私は椿さんと看護師さんを見比べるように交互に見る。


そんな私を見て椿さんは、ふふっと軽く笑い言った。

















「じゃあ返事はまた今度ね」






まさかのまた今度。



ただ一言聞くだけなんだから今すぐ、と食い下がろうとしたがぐっと手を握りしめ、



「はい、分かりました。手術、成功を祈ってます」


椅子から立ち上がり、病室を出る。




ガチャン




扉が閉まる音と同時にその場にへたり込む。



「あ"ーーーーーー」



言っちゃった。


ついに言っちゃったよ。








でも、椿さんのあの表情は、








期待、してもいいんですか?


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category:  第16章鈴の音

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