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A loved one

女性同士の恋愛を取り扱う百合小説サイトです。オリジナル小説で主に年上×年下を取り扱っています。無断掲載・無断転載・複製・配布等は禁止です。以上の事を踏まえた上でのご入場宜しくお願い致します。

第16章 鈴の音② 


今日の14時に、手術……




なんで椿さんは私に言ってくれなかったんだろう。



寝ていたから?


でもそれは昨日じゃなくても伝えられたはずだ。
手術はもっと前から決まっているはずなんだから。








じゃあ、どうして?


どうして椿さんはーーー











「楓?」



ふと、呼ばれた声に思考の渦から呼び戻される。


「ん?」
「なんか、ぼーっとしてたけど大丈夫?」
「ん、あぁ、ごめん大丈夫」

目の前の雑貨を手に取り意識を現実に向ける。
それでも、14時という単語が頭を離れない。




現在時刻は12時26分



病院に行くなら13時にはここを出なければ手術前の椿さんに会えない。



と、頭の中で勝手に時間計算してる自分が嫌だった。


「あ、ねぇ!これ可愛くない!?買おっかなぁ」

隣で意識がここにない私と一緒にいるにも関わらず楽しそうにはしゃぐ綾香。





不意に罪悪感が胸を黒く覆う。




また、忘れていた。

椿さんとまた会うようになってから、綾香が"彼女"ということを忘れてしまう。



綾香の、笑顔を見て、幸せそうな顔を見て、不意に思い出す。
















この子は、"彼女"















結局綾香は買い物をせず店を出た。



「あ、ねぇねぇ、公園寄ろうよ!」


偶然通りかかったそこは休日にも関わらず人っ子一人いない公園だった。


遊具はパンダが1体、いるだけだった。


さすがに綾香はパンダには興味ないようで、自然と2人の足は大きな木の下にあるベンチに向かった。


2人でそこに座る。

大きな木で日陰になっているそこはベンチに触れている所からどんどん熱を奪っていく。



なんで冬のこんな時期に公園なんだ。


今さら気がついた私は綾香に提案ーー















「ねぇ、私達って……付き合ってるんだよね?」










出来なかった。


綾香の、その潤んだ瞳を見て、私はなにも言えなかった。



綾香はそんな臆病な私に気にせず、言う。




「付き合ってるんだから、良いんだよね?」




なんの確認か。


そう言うと綾香は私の肩に手を置く。


いつの間に移動したのか、私と綾香の座っていた距離が縮まっていた。

熱い吐息が、頬を撫でる。


綾香は潤んだ瞳で私を見上げながら、徐々に近づく。

そして、そうっと目を閉じた。









ーーー私は綾香の恋人




ーーー私は綾香が好き




ーーーだからコレを受け入れるべきだ


















ーーーーーー本当に好きなの?




ーーー椿さんは?




ーーー苦しくない?




ーーー辛くない?




ーーー我慢するのって、大変じゃない?















































ーーーーーー気持ちを抑える、意味がわからない









バッと綾香の両肩を押して引き離す。


「え、」


「ごめん」

「……」

「ごめん、ごめん綾香」

ただ、謝った。

「ごめん。綾香のこと、好きになれなかったや」


声が震える。


どうしてか、涙が出てくる。



「やっぱり楓、椿さんが忘れられないみたい」


涙が流れても、私は、



「こんな自分勝手な楓と付き合ってくれて、」


綾香がなにも言わなくても、私は、



「こんな楓を好きになってくれて、」












ーーー笑顔で伝えよう。














「ありがとう」





あの日、駅のホームで重なった言の葉は、今度は1人で、力強く、言葉となる。




途端に、ギュッと、綾香が抱きついてくる。



拒否した手前、慌てて引き離そうとするが




「今だけ」



そう耳元で小さく言うから、今だけ、受け入れる。


「私こそ、ありがとう」


ボソッと、離れていたら聞こえないんじゃないかってくらいの声で話す綾香。


「私の我が儘に付き合ってくれてありがとう。……幸せにならなかったら、承知しないからね」



そう言うと、そっと私から離れる。


「時間、大丈夫?」


綾香が言う。



へ?


慌てて時計を見ると、時刻は13時10分



「わぁ!やべぇ!!ごめん!もう行くね!」


ベンチの横に置いたリュックを掴むと全力で駆け出す。

公園を出て、駅に向かう途中で気がつく。



そう言えば、なんで綾香は時間のことを知っていたのだろう。



全力で走ってると、そんな疑問はすぐに掻き消え、なんとか予定の電車に間に合った。



***



「デート中にこれでもかって言うくらい時間気にしてたら誰だって気がつくよ」


公園に残った綾香はしばらく冬の空を眺めていた。










「隣、良いですか?」



突然の問いかけに綾香は顔を上げる。


そこには、黒髪セミロングのツヤツヤとした髪の毛。眼鏡の奥にある目は垂れ目気味で、優等生っぽい見た目をしているがどこかふわふわとした雰囲気がある子が隣を指差し問いかけていた。


「あ、ど、どうぞ」

「失礼します」


その子はそう言うと綾香から少し離れた所に腰掛け、鞄から本を取り出し、読み始めた。






冬に公園で本を読む。




これが春とか秋とかならわかるが、冬って……


綾香は自然と笑みが浮かぶ。


人1人分距離を詰めて問いかける。


「ねぇねぇ、なんの本読んでるんですか?」






冬の公園で本を読むような不思議ちゃんと綾香の出会いは別の話。


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category:  第16章鈴の音

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