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A loved one

女性同士の恋愛を取り扱う百合小説サイトです。オリジナル小説で主に年上×年下を取り扱っています。無断掲載・無断転載・複製・配布等は禁止です。以上の事を踏まえた上でのご入場宜しくお願い致します。

第16章 鈴の音① 


コンコン、ガララ



「失礼しまーす」


デートの後すぐにお見舞いに行った。

面会の時間があと少ししかなかったが、お邪魔させてもらうことにした。






珍しいことに、静かだった。




椿さんの向かいにいる田中さんと佐藤さんが居ないせいか。








それともーーー

















椿さんが静かに、寝ているからか。






明らかに、前者だな。

じゃなくて、









寝てる。







椿さんの寝顔を見るのは初めてだ。




そっと扉を閉めて椿さんのベッドに近づく。








綺麗な寝顔。








少しだけ開いた口が子供らしく、でも綺麗にカーブした長いまつ毛がある目は大人っぽくて、
















「可愛い」











声が漏れた。


咄嗟に口を手で押さえたがもう遅い。




「んっ……」



モゾっと椿さんが寝返りを打つ。



















チリん
















ふと、鈴の音が聞こえた。


それは、聞き間違いでなければいつも私が携帯を使う時に聞く音。



モゾっと落ち着く形になろうと椿さんが動くたびにチリん、と音がする。



やっと落ち着いたのか私の方を向いて肩を下にして手を顔の前に持ってきた。









「っ!!」






椿さんの手元を見て、一瞬息が止まる。





ピンク色のそれは、椿さんの両手の中で優しく包まれている。
















なんで、











どうして、









私はブレザーのポケットから携帯を取り出す。



その揺れで赤色のそれはチリんと鈴を鳴らす。


















くまのキーホルダー











私の携帯にぶら下がってるのと、椿さんの手の中にいるくまのキーホルダー。



修学旅行で色違いのお揃いにしたキーホルダー。










なんで、それを、
















大事そうに持って寝ているのか。












期待しても良いのだろうか。














そのお揃いのキーホルダーは椿さんにとって寝る時に抱えるほど大事な物なのだろうか。





















もしかして、私はーーー
































ーーー我慢しなくて良いんじゃないか










思ってしまった。










その瞬間、私の中で何かが崩れる。




それは、あまりにも脆く歪な壁。



その壁にせき止められていたのは不釣り合いなほどの量の感情。







私は、無意識のうちに携帯からキーホルダーを外す。



一体何をしようとしているのか、自分でも分からない。








そっと椿さんの手の中からピンク色のキーホルダーをとる。

同じ場所に私の赤色のキーホルダーを代わりに握らせる。






それが一体何をもたらすのか分からない。


それでも、私はピンク色のキーホルダーを携帯からぶら下げる。






キーホルダーが変わったことに気がつかない椿さんは相変わらず大事そうにキーホルダーを握っている。




しばらく、その安らかな寝顔を眺めていた。





ガララ





不意に病室の扉が開く音が響く。


振り返ると、そこには看護師さんがいた。


「面会の時間は終わりです」


ふわふわとした雰囲気の若い看護師さんがニコッとした笑顔を浮かべながら面会時間の終了を告げる。

「あ、はい、今帰ります」

脇に置いたリュックを手に取り廊下へ出る。


「今日は来るの遅かったですよね?」


不意に看護師さんが話しかけてきた。


「え、あ、はい。そうですね」
「いつも来てますよね。妹さんですか?」


ズキっと心が痛くなる。


妹、とか、友達、とか、上司、とか。
そんな関係がないとお見舞いに来ちゃいけないのかよ。


「いえ、ただの知り合いですけど」
「そうなんですか!優しいんですね」


看護師さんは歩き出しながら言う。




優しい?
私が?



こんな自分の事しか考えてない私が、優しい?



歩き出した看護師さんに付いて行くように私も歩き出す。


「そうですかね……」
「そうですよ。でも、楠見さんも凄いですね、明日が手術だなんて思えないくらい明るいですよね」















一瞬、聞き流しそうになる。








「え、明日が手術?」
「あれ?知りませんでしたか?えっと……じゃあ聞かなかった事に!」
「どういう事ですか?明日、椿さんは手術なんですか?」


軽く、流そうとする看護師さんだか今はそんな事にかまってる暇はない。

私は足を止めて看護師さんに言い寄る。
看護師さんは諦めたように、肩をすくめた。



















「明日の14時に楠見さんは、手術します」



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category:  第16章鈴の音

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