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A loved one

女性同士の恋愛を取り扱う百合小説サイトです。オリジナル小説で主に年上×年下を取り扱っています。無断掲載・無断転載・複製・配布等は禁止です。以上の事を踏まえた上でのご入場宜しくお願い致します。

第15章 その瞳の意味② 

こんにちは、颯です。

なんかもうコメントを記事で返す自分が恥ずかしくなってきたんでコメントはコメントで返信するようにします……



*****



あ、茜さんだ。





そう思ったのは病気のばぁちゃんのお見舞いに行く途中の車の中。


信号待ちの車の中から外を見ていたら、茜さんが歩いているのを見かけた。


ここら辺が家なのだろうか。


少し気になったが、信号が変わり茜さんは私の視界から徐々に消えていった。


それからすぐ、病院に着いた。



病院に入ると、異様な静けさに包まれる。
事務的な音しか聞こえない。


この静かさは嫌いだ。

図書館のような気持ちのいい静かさでは無い。


なんか、表現し難いが嫌いだ。



病院内は以外と通行人がいた。
有名な病院なのだろうか、辺りをキョロキョロ見ながら歩く。






















ふと、


匂いがした。






薬品の匂いに混じって、


微かな、嗅ぎ慣れた匂い。







そして、



気が付いた。



匂いの正体に。







ぎゅっと手を握りしめる。


匂いを嗅ぎ取ってしまった自分が嫌だ。




一瞬で気が付いてしまった自分が嫌だ。






でも、どこかに嬉しいと思ってる自分もいる。













その自分が私を振り向かせた。













やはり、視線の先にはその人がいた。



予想外だったのは、その人もこっちに振り向いていた、という事。
と、その人が着ていたのはいつものパンツスーツでは無く病人服、という事。






その人は、いつも通り、駅のホームで挨拶するかのように、言った。


























「久しぶりね、楓」

























ドクン、と強く鼓動が鳴る。



名前を呼ばれただけで、私の意思が揺らぐ。



ここで、その人の名前を呼んではいけない。



そう理解していたつもりだった。





でも、














「椿、さん」










呼んでしまった。




胸の奥底にしまいこんだはずの恋心が溢れ出てくる。


ギュウギュウに物を詰め込んだ箱を1度開けてしまえば物が溢れでるのを待つしかない。


そして、再び仕舞うのも至難の技。





私は、溢れ出てくる恋心を見てることしかできなかった。






椿さんは病人服に似合わないような笑みで近付いてくる。



「少し、話しできる?」

「え、あ、」



変わらない。

どんなに別れ方が最悪だろうと、最低だろうと、変わらない。




椿さんは笑顔で私と再会してくれる。

いつも通り会話をしてくれる。












いつも通り過ぎて、





ーーー辛い程に。





「ダメ、かな?」
「あっ、えっと、」



前を行くお父さんと椿さんを交互に見る。


「後で!後でなら大丈夫です!」


私の必死な答え聞いて、綺麗にクスリと笑う。



「そ、ありがと。じゃあ用事が終わったら158室に来てね」



そう言うと、いつも通りの笑顔でヒラリと手を振りエレベーターに乗り込んだ。



***



「158室158室158室158室……あった」


楠見椿、という文字も一緒に書かれている。

「大部屋だ」

椿さんの他に2人の患者さんがいる。



……あれ?大部屋ってノックするのか?
まずい。分かんない。


しばらく扉の前で考えた結果。



そっと深呼吸をして、小さくノックした。


ゆっくり扉を開けると談笑の声が聞こえてきた。

その声は扉を開けた音で途切れ、いくつかの目がこちらを向く。



「あら、可愛い子ね。迷子になった子猫みたい。誰の知り合いかしら?」


一番左手前のベッドに座ってる中年のおばさんが興味津々といった顔で話しかけてきた。


迷子になった子猫って何!?
褒められてる表現ではない気がしたけど私はさっと部屋を見渡し、右奥にいる椿さんを見つけた。


椿さんは微笑みながら手招きする。

失礼します、と小さくお辞儀しながら部屋に入った。


「あら、椿ちゃんの知り合い?妹さんかしら?」









聞きなれない例われかたに私ははにかんだ。


「いえ、ただの知り合いですよ」
「あら、そうなの?まぁそんなことより良いわねぇ若いって」

そう言うと隣の同じくらい中年のおばさんに話しかける。

「何言ってんのさ、あたしたちだってまだ若いわよ!」
「そんなこと言えるの貴女だけよ?」

今時の女子高生よりも話の切り替えが早いおばさん達を見て私は苦笑いを浮かべる。



「楓、座って」



名前を呼ばれることにドキりとする。




私にはあの子がいる。私はあの子がいる。


そう自分の中で言い聞かせなければ心が揺らぐ。

恋心は溢れ出てしまったが、それでもまだ、自分の大切な人はあの子だと言い聞かせる。




椿さんが好きなのは認める。

でも、もう諦めたんだ。



私は丸椅子を寄せ跨ぐように座り込む。


「…………」
「…………」
「…………」
「…………」



……あ、あれ?

沈黙だ。


私と椿さんは気まずそうに俯く。



「……ねぇ、お見舞いに来たのに何であんなに雰囲気暗いのかしら」

コソッと部屋の反対側からおばさんが隣の人と話している。

「さぁ、やっぱり生き別れの姉妹とかそんな感じじゃないかしら」


それならどんなに良かったか……


「あの……」「楓は……」
「あっえと、ど、どうぞ!」
「ううん、楓から良いよ」


被った。
畜生、なんてタイミングが悪いんだ。


話したいことはたくさんある。
聞きたいこともたくさんある。

でもそれら全てを聞いていたらキリがない。
簡潔に、簡潔に、簡潔に……


「えっと、その……椿さんは、なんでここに?」


簡潔すぎた!
しかも分かりきったことを!!!!


病院にいる理由は1つしかないでしょう!


「……病気、だからかな」

椿さんは一瞬ポカンとした表情をして、苦笑いとともに言葉を吐き出した。



病名は言わない。
言いたくないのか。


言いたくないことを聞き出す手段は、私には、無い。


そして、深く追求する資格も、私には、無い。



「そりゃそうですよね」

ハハッと乾いた笑いで誤魔化す。


椿さんはそんな私を見て、

















「楓は、今幸せ?」

















って。




「っ!!」



それは、有無を言わせない疑問系で。

椿さんは知ってる。
私の現状を。

女の子と付き合ってることや、もしかしたら椿さんのことを好きだったことも。






「まぁまぁ、ですね」


曖昧な返事で濁す。


でも、





「そっか、幸せか」



椿さんはそう断定した。


まるでそれは、私が幸せだと、椿さん自身に言い聞かせてるみたいで、胸が苦しくなった。






……なんだよ、それ。



なんで、今更私なんかの幸せを考えているの。


私の気持ちに気が付いているなら、答えは?


あからさまに私のことを気にかけてるのに、それでも、知らないふりをしている椿さんに怒りが湧いた。






でも、





「まぁまぁって返事は幸せ、断定なんですか」




その怒りは私の中で押さえ込まれる。



私が、我慢すれば全て丸く収まる。



私は軽く笑いながら冗談を言うように話す。


「そ、幸せじゃないと困るわ」


ニコッと、まるで椿さんが、私の気持ちに気が付いて、と言ってるかの様なストレートな言葉に言葉が詰まる。



「……そ、れは……なんでですか?」

「なんで、だろうね。なんでか、楓には幸せでいて欲しいのよ」



椿さんは私から顔をそらし窓の外を見る。

私もつられて外を見ると、空は曇天。

でも、外を見る椿さんの顔は本当に、幸せそうで、不思議な感覚がした。


「楓もーーー」



ーーブーブブッ



そこでタイミング悪く、携帯のバイブがなる。


「あ、っと、すみません」


携帯を開くとお父さんから。


『帰ります。今どこにいるんですか?』


はぁ、タイミング悪すぎでしょ。

「すみません、もう帰らなくちゃいけないんで」
「あら、そうなの?ごめんね呼び止めちゃって」
「えっと、また、来てもいいですか?」


私が椿さんにそう言うと、椿さんは、

「もちろん」

そう、言ってくれた。


病気、という事を忘れてしまうかのような笑顔で。



***



「どこにいたんだ?」


駐車場に停めてある車に乗り込むと、開口一番に聞かれた。


「……知り合いがいたからちょっと話してきた」
「ふーん」


大して興味もなさそうに車を発進させた。


窓から外を見て、一生懸命外の道を覚える。

そして、案外近いことが判明した。
自転車で行けば20分ほどで着くことができるだろう。

真っ直ぐな道が多いことから迷うことはなさそうだ。








大丈夫。
ただ、お見舞いに行くだけだ。


だから、大丈夫。


そう言い聞かせて、私は、あの子を裏切った事に気が付かぬままあの子に、笑いかけるのだろう。


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category:  第15章その瞳の意味

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コメント

病気(´・ω・`)
2人とも早く素直になって…!
名無し #- URL [2015/08/08 08:45] edit

Re:

コメントありがとうございます!
返信遅くなり申し訳ありません!

世話がやける奴らですよねぇ(´・ω・`)
颯 #- URL [2015/08/24 13:51] edit

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