FC2ブログ
07«1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31.»09

A loved one

女性同士の恋愛を取り扱う百合小説サイトです。オリジナル小説で主に年上×年下を取り扱っています。無断掲載・無断転載・複製・配布等は禁止です。以上の事を踏まえた上でのご入場宜しくお願い致します。

第14章 限界④ side椿 

結局お昼ご飯の時は柏原君も同席した為メールの話はしなかった。



時刻は18時過ぎ。

ロビーで部長を待つついでに茜とメールの話の続きを話していた。


「今日の夜に楓と会う約束を持ちかけられたんだけどね、お得意様と飲むことになっちゃって行けないのよ。それでメール送ったんだけど一向に返事来なくて……」

夕方になった今でもまだ、返事は来ていない。



「忙しいんだよきっと。あの子は椿を見捨てるようなことは絶対にしないから大丈夫」



そう言う茜の目は真剣そのもので冗談を言う目ではない。



一体どこからそんな根拠……



「あれ?あれ楓ちゃんの友達じゃない?」

不意に、茜は会社の外を指差し声を上げる。

私も指のさす方に顔を向けると、そこには街灯に照らされ、マッシュの様な髪型の女の子がいた。


あの子は確か、お化け屋敷で楓と回ろうとした子……




ふと、目が合う。




それを待っていたかのようにその子は小さくお辞儀をした。








嫌な予感がした。



「ちょっと行ってくる」

そう、茜に伝え時計を見ると18時43分。
まだ時間はある。


会社から出て彼女の元へ向かうごとに大きくなる不安。

そして、辿り着く。



「こんにちは、どうかしたの?」


その子は私の目を真っ直ぐ見て、言った。












「いつもの待ち合わせ場所ってどこですか?」










本当に、私の嫌な予感は当たる……


「どう言う……」
「楓との約束、見てました。そしてその後に交わされた貴女の約束も」
「……」


私には、何も答えることが出来なかった。



私は今日、楓との約束には間に合わない。
だから、楓の為を思うならこの子に待ち合わせ場所を教えるのが良い。



でも


どうしてか











この子には教えたくなかった。











それは、この子の瞳に憎しみが篭ってるからか。
この子に見透かされてる様な気がしているからか。



わからない。




でも、教えたくないと思った。




「待ち合わせ場所、行けないんですよね?」
「……なんで?」
「え?」


その子の瞳が初めて私の抵抗を見て、揺れる。



「なんで、君に教えなくちゃいけないの?」
「な、なんでって、貴女が行けないんだから私が行くんです」


その、揺れた瞳も一瞬で無くなり再び私を捉える。







「君が、行く意味は?楓との約束は私がしてるの。君じゃないわ」
 






「っっ!!」


その子は俯き、両手を握りしめた。




今、私はこの子より楓の事を思っている。

それが、少し嬉しかった。



「ーーーーないのに……」


「え?」









「楓の気持ちに応える気が無いのに楓と一緒に居ないで下さい!!!!!!!」









……楓の、気持ち……?
応える……?


「楓の気持ちって……」
「楓の為を思うなら、待ち合わせ場所、教えて下さい」


あ、れ……?
私は、この子より楓の事を思ってた?
楓の事、分かってる?




分かってない。
分かってないから楓は苦しみ、今日約束した。






私は、楓を苦しめてるだけ?









「                             」



その子は一礼すると、立ち去った。


変わるように私の後ろから声が掛かる。


「探したぞ」

いつの間にか19時は過ぎた。


「すみませんでした。少し知り合いと話を」

上司との約束の時間を破り、探させる。

これほど失礼なことをしたのに謝るための誠意が湧いてこない。


しかし部長はそんな私を怒るわけでもなく、




「朝から変だぞ。大丈夫か?」




心配した。


その言葉に、私は私を取り戻した。








大丈夫、あの子には、あの子を"想ってる子"がいる







「はい!大丈夫です。すみません、行きましょう」



今は、この人との過ごせる少ない時間……だから……。

だから……大丈夫……




***




「やぁやぁ近藤君、楠見君、久しぶりだね。今日は仕事の話は無しで飲もうじゃないか」


お店の前でお得意様を待っていると小太りの仏のような顔をした人がタクシーから降りて来た。


「お久しぶりです、佐藤様。席は既に予約してあります、どうぞ中へ」


そんなお爺ちゃんみたいなお得意様を私は、嫌いではなかった。



そして、仕事抜きの呑みは始まった。

そして、出来上がる。



「僕はあの時の後悔が今でも忘れられないよ」


お得意様が酔って昔の恋バナを話題にあげた。
さすがにおじいさんの恋バナに興味は湧かない……


「あの時、彼女の心の傷に気付いてやれれば彼女は僕のそばから離れることはなかった……」




でも




「油断していたんだ。彼女が僕から離れることは絶対にないって。彼女は僕のことが好きだったから。好きだから離れることは絶対にないって思ってたのに……」





似てる。





「彼女は僕の側から離れたんだ。そして、後から気がつくんだ、僕も彼女に惹かれていたことに。大切なものは失ってから気がつくってことを痛感したよ」





あり得ない程に私の状況と似ている。





楓も、私のことが好き、なの?

あの子が言っていた楓の気持ちって、これ、なの?

女だから、気持ちを押し殺して、苦しんでいたの?

それに、気が付かず楓を苦しめ続けてる私は、どうすればいいの?



「すみません、少し御手洗いに」


部長が立ち上がり席を外す。

お得意様はちびちびと焼酎を呑み、突然トンっとグラスを置いて私を見つめる。








「君にも、そう言う経験はあるかい?」








息が、詰まった。


見透かされてる。


会社で約束の事は振り切ったはずなのに、頭の片隅にあることを、見透かされてる。






「後悔は前には絶対できないんだ。何もしないで後悔するより、何か行動してから後悔しなさい」



「君にはここで呑むよりも大切な約束がある、そうだろう?」





エスパーか。


そんなツッコミもすぐに消え、深々と頭を下げる。

「申し訳ありません。お先に失礼致します」
「いいからいいから、僕は近藤君と楽しく呑ませてもらうよ、近藤君にも伝えておくから。後悔、しないといいね」


私はもう一度深く頭を下げ、店を出た。




いつの間にか外は雨が降り始めていた。


時刻は21時54分

ここからどんなに急いでも約束の時間は過ぎる。

それでも、私は早く、早くあの子に会いたい。

会って何を話すでも無いけど、とにかく会いたかった。



私は待ち合わせ場所に向かう為、傘もささずに走った。







ザッ






時刻は22時17分



駅のホームのベンチ。



私の視界に入ったのは、あの子ーーーと、


スポンサーサイト



category:  第14章限界

cm 0   tb 0   page top

コメント

page top

コメントの投稿

Secret

page top

トラックバック

トラックバックURL
→http://true0201.blog.fc2.com/tb.php/63-141fce85
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

page top

プロフィール

最新記事

カテゴリー

最新コメント