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A loved one

女性同士の恋愛を取り扱う百合小説サイトです。オリジナル小説で主に年上×年下を取り扱っています。無断掲載・無断転載・複製・配布等は禁止です。以上の事を踏まえた上でのご入場宜しくお願い致します。

第10章 絶対無い③ 

「私は楓の事好きよ?」






たった一言でサァっと世界に色が戻った。
 目の前の机や椅子や時計や周りの客、食器棚、コーヒーメーカーや伝票や観葉植物、トイレの案内板や、自分の手に、色が戻った。

 今、楠見さんの言ったことは間違いないのだろうか。
私の妄想だろうか。

じっと固まっていると、再び楠見さんは、

「私は楓の事好きよ、邪魔だなんて思ってないわ」

 例えそれが上っ面だけでその場限りの言葉だとしても、私はまだ――希望を望める。

「ははっ、か、楓も楠見さんの事す、好きですよ。勿論likeの意味で」

なんとか、言葉を発することが出来一安心する、が





「……likeの意味以外に私たちの間では成り立たないでしょ?」





「っ!!!……あ、ははっそっすね。勿論そんなことないっすよ、全然、そんな、こと……ははっ……」

危なかった。
上手く笑えていただろうか。
上手く動揺を隠せただろうか。


当たり前だ。
女と女のloveな気持ちなど世間から気持ち悪がられ、反対される。
ましてや社会人と高校生。叶わない恋にも程がある。

 楠見さんは私の乾いた笑いに首をかしげるが、そこで丁度頼んだメニューが来て話は一時中断となった。




***




 もちゃもちゃした何かを口に運ぶ。
それを冷たい何かで流し込み再びもちゃもちゃした何かを口に運ぶ。

 あ、蝶々だ。
ひ~らひら、ふ~よふよ。あはは、可愛いなぁ。あ、蜘蛛の巣、危ない。あぁ捕まった。弱肉強食かぁ。世界の理で言うと私は弱者?強者?どっちでもいいや。もうどうでも――




「楓?まだ話は終わってないわよ?」




 力のない目で声のする方に目を向ける。
そこには既にイチゴタルトを食べ、アイスコーヒーをすすっている楠見さんがいる。

「そっすね、えっと、何の話をしてましたっけ?」
「なんで名前で呼んでくないのか、よ」





「……あぁ、それは……これ以上楠見さんを好きにならない為ですよ」





「どういうこと?」
「そのまんまの意味です」

 言ってしまった。でもこの人は一生私の気持ちを理解出来ないだろう。
「好き」の意味が通じてないんだから。

「別にいいじゃない、私は楓に好きになってくれるの嬉しいわよ?」

ほらね、likeの意味でしか理解してないからこんなことが言えるんだ。

「そりゃあ良かった。じゃあまた椿さん、と呼ばせていただきます」

 私は抵抗する意思を失い、力無く笑い頭を少し下げる。食べえかけのモンブランが私の視界の中で、横に倒れた。

 モンブランありがとう。私の心を再現してくれたんだね。私の心は強くないからすぐに倒れちゃう、折れちゃう。
私にはモンブランの様に周りを囲ってくれるカップが必要なんだよ。




それが今、無くなっちゃった。




「なんか、元気ない?」

くすみ……椿さんがようやく私の心に気がついてくれた。表面だけ。

「うーん、ちょっと落ち込んでるんですよ」

貴女の事で。
 そんなことが言えたらどんなに楽だろうか、所詮私の気持ちはそんなもんなのだろうか。

「話、聞くよ?」

やはり楠見さんは優しい。こんな高校生の悩みを何の迷いもなく聞いてくれる。そんなところにも惹かれたのかもしれない。

もう、言ってしまおうか。そうしたら楽になるかもしれない。最高のBADENDが待っているかもしれない。
幸せが終わるのではなく、苦しみが終わる。
そんな終わりでも悪くはない――――






「楓……ティラミス頼めば良かった」






――そんな勇気は、ない。
だから、これ以上変に勘付かれない様に明るく振る舞うしかなかった。
笑え。

「このモンブランも超美味しいんですけどやっぱりなんかメニュー表のティラミスが頭から離れなくて……」

笑え、笑え。笑顔を貼り付けろ。決して剥がしてはならない。笑え。

「今からもう一個頼もうかな、いやでも金が……」

気持ち悪い。
道化のような笑顔を貼り付け感情を封じ込める。
気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い――――




ゴクッ




 手元にあった水を一気に喉に流し込み腹の中のものを再び押し込む。

「私が奢ってあげるよ」

 こんな状態でティラミスなんて食べたらトイレ直行だよ。
 モンブランと一緒に喉まで出かかった言葉を飲み込み笑顔を貼り付ける。

「え!マジですか!?え、良いんすか?!」

笑え。

「まぁ一応仲直りした証にって」

笑え。

「え、じゃあ割り勘すべきですよ!」

笑え。

「んーそうね、じゃあお言葉に甘えて」

 そう言うと椿さんは早速店員に注文し、ついでにアイスコーヒーを頼んだ。
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