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A loved one

女性同士の恋愛を取り扱う百合小説サイトです。オリジナル小説で主に年上×年下を取り扱っています。無断掲載・無断転載・複製・配布等は禁止です。以上の事を踏まえた上でのご入場宜しくお願い致します。

第10章 絶対無い② 

「楠見さん、ごめんなさい」






正直に謝った。

姿勢を正して、頭を下げ最大限の反省の心を表す。



「やっと、言ってくれるんだ」



 その言葉につい顔を上げてしまう。

その言葉の発言者、楠見さんはニコニコと私を見つめていた。
 その言葉の意味を噛み砕き、飲み込む、そして、理解する。

楠見さんは待っていてくれたんだ。
私が、楠見さんを避けた理由を話すのを、話し始めるのを。

 私はその期待に応えたい。
大きく息を吸って吐く。高鳴る鼓動を落ち着かせ唇を舐める。
そして、私は言葉を紡ぐ。

「最初は、楠見さんと一緒に――」
「ちょっと待って」

 折角、意を決して説明をしようとしたところで待ったがかけられる。

「え、と?」
「そもそも“楠見さん”って呼ばないでって言ったわよね?」

うぐ、そのことから来ましたか。
それまじプライバシーの問題とか入ってくるんですって、問答無用ですね楠見さん。
 そんな私の気持ちなど露知らず畳み掛ける。

「なんで“楠見さん”って呼ぶの?」
「ぁ、ぅ……」

前にも言ったが、それを言っちゃうと私の気持ちまで言わなくちゃいけなくなる。
さすがにそれだけはちょっと、ねぇ?

「ま、まぁそんなことどうでも――」
「よくない」

ぴしゃりと言葉を遮られる。
楠見さんの目は本気だ。本気と書いてマジと読むくらい、本気だ。
 その目で見つめられ私の言葉は喉で突っかかる。
口をパクパクさせるしか出来ない私を見て楠見さんは俯いた。











「私のことが嫌いになったなら言って?」





ガタッ!!





「嫌いになんかなる訳無いじゃないですか!!!!!!!!」










それだけは言えた。
それだけは疑われたくなかった。
例え、どんなところでも。
それだけは声を張って言える。
カフェで大声出して注目浴びるより、楠見さんに気持ちを誤解される方が恐い。


 楠見さんは目を見開いて、私が大声を出したことに驚いている。
ハッと気づき楠見さんは周りを見渡し顔を赤くしながら私をなだめさせる。

「ちょっ!楓!座って!」






「楠見さんの方こそ楓のこと嫌いなんでしょう?」






その一言で私をなだめる楠見さんの手が止まった。
楠見さんの顔から感情が消えた。

ぐっと歯を噛み締め、震える手を白くなるまで握りしめる。
溢れてきそうな涙をグッと堪え楠見さんから絶対に目を離さない。



「なんで、そんなこと言うの?」



「楓が、邪魔なんでしょう?」



 楠見さんの返答には答えない。
しかしその声が涙声になったことに気が付き、遂に耐えきれず涙が頬をつたる前に椅子に座り俯く。
 こんなことで泣いてしまう自分が情けない。
こんなんじゃ楠見さんの隣に立つだなんてほど遠い。


―――その隣に立つチャンスを今、手放そうとしている。


 目の前に座る楠見さんは、一向に声を発しない。




否定はしないんだ。




その事実を本人の反応で理解してしまった。
やっぱり、邪魔だったんだ。嫌いだったんだ。
わざわざ連れ出したのはもうこれ以上付きまとわないでって言うためだったのかな。
優輝も知ってたのかな。
叶うはずのない恋をしている私をからかって楽しんでいたんだ。
哀れに思っていたんだろうな。



本当に、バカだなぁ――



「楓、顔上げて?」



楠見さんがそれでも声をかけてくれることが嬉しかった。
 もうこのまま何も言わずに立ち去ってしまうんじゃないだろうかと思っていた。

でも、今の私の顔は、

「やだ」

 涙はもう流れない。
悲しいを通り越して絶望だ。
圧倒的な絶望の前には涙も出ない。
希望を切望しすぎて絶望に変わる。
心が、空っぽになった。




むにゅ、ぐいっ




 突如、私の両頬を誰かの手が――楠見さんの手が包んで強引に前を向けさせる。
 目の前には楠見さんの笑顔。

なんで、この人は笑っているんだろう。
なんで、この人は傷1つ付いてないんだろう。
なんで、この人の心はこんなに強いんだろう。
それは、この人が大人だから?
なんで、この人は―――大人なのだろう。


「そんな世界が滅亡するような顔をしないで」


いえ、もう私の世界は崩壊した後です。
 そんな軽口も叩けず、この世の果てでも見た様な目で楠見さんを見つめる。

 色が、無い。
世界がモノクロの世界になったような錯覚を覚える。
ただ、目の前の楠見さんの笑顔だけが色を失わずにいる。



綺麗なピンク色を持っている口がゆっくりと開かれ―――言の葉が舞う。











「私は楓の事好きよ?」




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