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A loved one

女性同士の恋愛を取り扱う百合小説サイトです。オリジナル小説で主に年上×年下を取り扱っています。無断掲載・無断転載・複製・配布等は禁止です。以上の事を踏まえた上でのご入場宜しくお願い致します。

第8章 醜い嫉妬② 

 ご飯を食べ終わって各々自由な時間が訪れる。
私は平和記念講和の感想を書かねば……
さっき優輝に見せてって頼んだら即答で無理だってよ。
ちっとは悩んでくれてもいいじゃねぇか。

 うぬぬ、
ぬぬぬぬぬ、
ぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ、

「楓―聞いてよー」

一生懸命考えてるとこに石井が鼻の下をのばしながら寄ってきた。
 なんだね、こちとら忙しいんだ。

「感想見してくれたらいいよ」
「え?平和記念講和の?いいよいいよ、だから聞いて!」

 え、まじか。
これはラッキー。








「でねでね!さっきね!“楠見さん”と話してきたんだー」








ピタリと書き写していた手が止まる。
そんな私に気づく様子も無く話を続ける石井。

「もうほんと見た目だけじゃなくて中身も超いいの!あぁもうあんな美人がお嫁さんに来てほしい、あぁなんで女に生まれたんだろう、男だったら口説けるのに、いやでも女でも可能性ってあるのかな、あると私は思うんだよ!ねぇ!楓もそう思うよね!?」

 石井のマシンガントークなんか一切頭に入ることなく消えていく。
ただ1つ、聞きたいことで頭が埋まっていた。



「なんで石井が楠見さんの名前知ってんの?」



 あれ、私の声ってこんなに低かったけ、と疑問に思うくらい低く冷たい声だった。

「え、勿論聞いたからだよ。まぁそんなことよりね!楠見さんね今のところ結婚願望無いんだって!あんな美人さんなのに勿体ないよね、男共が黙ってないと思うんだけど。いやでもそこんじょらの男共には楠見さんは釣り合わないか」

へぇ、楠見さん結婚願望無いんだ。知らなかった。

「あとねあとね!楠見さんと便秘について語った!やっぱ女子の共通の話題だよね!あと、カステラ嫌いなんだって!長崎に来たのに勿体ないよねぇ。あと――」

次々と石井の口から私の知らない楠見さんの情報が出てくる。
今日出会ったばかりの石井の方が楠見さんのことをよく知っているのではないかという程、石井の口からはたくさんの楠見さんの情報が出てくる。

 私は、こんなにも楠見さんのことを知らなかったのか?
私は、楠見さんのことを知ろうとしなかった?
私は、一体楠見さんの何を知っているんだ?






 何も知らない。






 よく考えたら、楠見さんの仕事だって知らなかった。
彼氏の有無さえよくわからない。


知った気になっていた。
知られていた気になっていた。
何もわからない。
何もわかられていない。
今までの時間は一体何だったのだろうか。
有意義に過ごしていたと思っていた時間は一体何だったのだろう。
楠見さんは――


「でね!!!!」


ふと、いきなり大きな声になった石井の声で我に帰る。

「最後に写真撮って貰ったの!一緒に!」
「写真?……へぇよかったね」

なんでだろう、気持ちが盛り上がらない。

「見る?見る?見て!」

 ずいっと石井が携帯を近づけてきて嫌でも見ることになってしまう。
画面には満面の笑みで写っている石井と石井に密着して微笑んでいる楠見さんがいた。



「……んで?」
「え?」



その写真を見て遂に我慢が出来なくなった。



「これ見して何がしたいの?自慢?自慢ならほかの人にして、うざい」



 石井が目を見開く。
あぁ、ごめん。ただの八つ当たりなんだ。私が出来ないことを普通にしてしまっている石井に――






嫉妬、しちゃったんだ






「え、と、ご、ごめん」

あぁイライラする。
石井は何も悪くないんだから言い返してくれれば良いのに。そうしたら止まるかもしれないのに素直に謝ってしまう石井にイライラする。
それ以前に、八つ当たりしてしまっている自分に腹が立つ。
だけど――止められない

「っていうかその人、上っ面だけで人付き合いしてるからどうせ石井にも関心も何もしてないよ」

もう、やだ。
楠見さんの事までこんな風に言ってしまうなんてどうかしてる。
違う、楠見さんはそんな人じゃない。
 ただ、同級生で自分以外の人にもいい顔をしている楠見さんにイラついているのも確かだ。

「その人、かれ――ぐぇ」

 突然首根っこを掴まれて部屋から引きずり出される。
何が起きたか分からないまま廊下に尻もちをつく。

「君何言ってんの?」

見上げると珍しく優輝が不機嫌そうな顔で私を見下ろしていた。

「なにさっきの石井への態度、なにさっきの言葉」
「……優輝には、関係無い」
「確かに無いね。僕も首突っ込みたくなかったけど関係ない人が見てて首突っ込むしか無いほど最悪だよ君」
「…………」

分かってるよ、そんなこと。
私が最悪なこと位。
そんなもん一番私が分かってるよ。
でも、仕方が無いんだよ、自分でも気持ちがコントロールできないんだ。









「楓?」









―――――――――ドクン




いつぶりだろうか、この鈴が鳴るような凛とした声で名前を呼んでくれたのは、この声を聞いただけで私の不安は取り除かれ、大きく速く鼓動が鳴り響く。


ゆっくり声のする方へ顔を向けると、やはりそこには夜なのにいつも通りのスーツをビシッと着込み肩甲骨位まである黒髪を横で団子にしている楠見さんがいた。

仕事の途中なのだろうか、ファイルを片手に持っていた。
久しぶりに声をかけられたにも関わらず、そんな新鮮な楠見さんをぼーっと見てることしかできなかった。




「……髪、おろしてる方が可愛いなぁ」




……は?



「え?」

え、ちょっと待って私今何て言った?え?

「今なん―――」
「楓ーさっきはごめ――楠見さん!?」

 そこで急に部屋から石井が出てきた。
タイミングが良いのか悪いのか。

 さっきのことをわざわざ謝ろうとしてくれたのか謝罪の言葉が途中まで聞こえた。が、楠見さんに気が付き最後まで聞くことは叶わなかった。
まぁ石井が謝ることじゃないから良いんだが。

「楠見さん、さっきは写真ありがとうございました!」
「え、あ、石井、さん?そんなことでよかったらいつでもいいよ」
「本当ですか!?じゃ、じゃあもう一枚撮らせてください!」


パシャリ


……あぁまただ。
私の前で楽しそうに会話をしている楠見さん。



ギリリ……



 いつの間にか歯ぎしりがするほど強く歯を食いしばっていた。
多分これは、石井だからこんな気持ちになるんだと思う。石井が女性を好きになる可能性が高いから。

目の前の2人の光景をこれ以上見ていられずに、

「あ、楓!」

部屋に逃げ込んだ。
優輝が一瞬手を伸ばしてくれたが、振りはらって布団にもぐりこんだ。
目を瞑っても思い浮かんでくるのは楠見さんばかり。

可愛いと言ってしまった時にほんの少し見せた頬の紅潮、その後に言葉を続けようとした時のイタズラをしそうな顔。
全部私に対して向けてくれた表情。
でも、その表情を他の人も同様に見てると知ってしまった。

私しか見てないとは思ってない。
私にしか見せてるとは思ってない。
ただ、私はちょっとだけでもいいから特別が良かった。
皆と同じレベルの関係じゃ足りない。
もう一歩、一歩でいいから皆より前に進みたかった。

でも所詮楠見さんにとって私は皆と変わらなかった。
そのことを今更気づいたのが悔しくてまた、逃げた。

だんだんと睡魔がやって来て意識を薄れさせていく。













「――明日、楓借りるね」
「勿論、オーケーですよ――」
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category:  第8章醜い嫉妬

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コメント

こんにちは。先程全てのお話し拝見させていただきました。とても楽しく、一気に読んでしまいました!
勉強との両立大変でしょうが頑張って下さいね♪
とみ #- URL [2014/08/29 11:08] edit

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